作品概要
作品紹介。 「ただいま〜。お母さん帰ったわよ〜。」 黄昏の夕日の差し込むオレンジ色の我が家の廊下。 隣の家の夕飯の香りと家族の喧騒。帰宅時刻を告げる放送。 慣れ親しんだ優しい母の声。ただ一つの違和感を除いて。 「開ケテ。開ケテ。開ケテ…。」 玄関のガラスに映り込む、母のものとは思えない巨大な影。 優しげな声音は無機質な別のナニかへと変貌し、機械のように同じ言葉を繰り返す。 『あのね、一人でお留守番をしている時、絶対に玄関を開けちゃいけないんだよ。』 学校で同級生たちがしていた噂話…。 『喪服さま。』 顔の無い、放課後に現れる怪異の噂。 『喪服さまはね、いつの間にか本当のお父さんとお母さんと入れ替わっちゃうんだよ。』 『喪服さまはね、…
【試し読み】顔の無い都市伝説



【作品の概要】
作品紹介。
「ただいま〜。お母さん帰ったわよ〜。」
黄昏の夕日の差し込むオレンジ色の我が家の廊下。
隣の家の夕飯の香りと家族の喧騒。帰宅時刻を告げる放送。
慣れ親しんだ優しい母の声。ただ一つの違和感を除いて。
「開ケテ。開ケテ。開ケテ…。」
玄関のガラスに映り込む、母のものとは思えない巨大な影。
優しげな声音は無機質な別のナニかへと変貌し、機械のように同じ言葉を繰り返す。
『あのね、一人でお留守番をしている時、絶対に玄関を開けちゃいけないんだよ。』
学校で同級生たちがしていた噂話…。
『喪服さま。』
顔の無い、放課後に現れる怪異の噂。
『喪服さまはね、いつの間にか本当のお父さんとお母さんと入れ替わっちゃうんだよ。』
『喪服さまはね、その家の子供が招かないと家には入れないんだよ。』
でもね。
『喪服様を家にあげた子供は、ずっと大人にならずに子供のままでいられるんだって。』
息を詰まらせながら必死に施錠した玄関。
狂ったように鳴り続ける家の固定電話。玄関から響く無機質な怪異の声。
まるでずっと続くような狂った時間。
「ねえお願い、開けてちょうだい。」
耳に届いたのは今本当に帰ってきた母の声か、それとも…。
いつものように、いじめられて家に帰った放課後。
友達の居ない習い事。
両親の機嫌を取るために良い子でいるしかなかった子供時代のあの日。
あなたの隣に確かにいた、放課後ノスタルジー怪異漫画。
